「ちょ、うぇ!?…まじ!?」
飲みかけのカフェオレを、ベットに取り付けられた台の上にドン、と音が鳴るほど乱暴に置いたヒナが、目を見開いて私の顔を見つめてきた。
「連絡用の、番号貰っただけだよ?」
そう言って見つめ返すと、ヒナはため息をついて、大袈裟に肩を落として見せる。
「ばっか言ってんじゃないよお!あのトキくんだよ!?…この前のライブで、トキくん滅茶苦茶人気が出ちゃって、同じ高校の女の子たちなんか、どうにかしてトキくんのアドを手に入れようと躍起になってるのに…信じられない…あの、ガードの固いトキくんが!」
まあ、はじめからビックリではあったけどさ。
そう呟かれて首を傾げると、なんでもないよと笑われた。
そんなに、特別なこと…?
「寂しくなったら電話しちゃいなよ」
そう、悪戯っ子のようにニヤニヤと笑うヒナをじろりと睨むと、目じりを下げてニンマリされた。
絶対、しない。
だって、あのトキだよ。
いつもエロだとか変態だとか言って、意地悪そうに笑ってばっかりで。
わけわからないし。窓から入ってくるし…。
…でもたまに、優しいけど。
「とにかく、ありえない!」
「誰に言ってんのよ、東子」
可笑しそうに愉しそうに笑うヒナの声が、何故か熱を持った耳を、くすぐった。