鍵盤の上、指先が踊る。 あの時、冷え切っていた指先が、今はまるで歌うように音の階段を駆け上がっていく。 ―ピアノを弾くときは、自分の一番好きな場所をイメージするの。 いつか聞いたヒナの声が、記憶から蘇った。 …私の、好きな場所。 浮かんだのは、 きらきら光るドラムセット 滑らかな曲線を描く、ベースやギター グラウンドピアノの上であぐらをかきギターを弾く、 トキの、後ろ姿だった。