しばらくぼうっ、としてたらしく気付いたら俺の出番になってた。
初めて、演じることに戸惑って、セリフの文字を口にだせばいいのに、困難に感じた。
それだけ、あいつに圧倒された。
……ちくしょ…っ!
あの演技に目も心も奪われたのは事実。
乱された心は静まることがない。
「壱流くん?」
「すみません、…お願いします」
今は俺をみせろ。
俺だけの川嶋祐樹をみせる。
今はそれだけだ。
「壱流、おつかれーっ」
控え室に戻ると、メンバー全員が揃っていた。
「一回きゅーけい?」
「……あぁ」
俺の頭の中にはさっきあいつと撮ったシーンが繰り返し流れていた。
初めて、美音に出会うシーン。
屋上に座り込んでいる美音に話し掛けて、なんも返事をしない美音にキレる。
…そんなシーン。
『お前、名前は?』
『……』
『おい、無視すんなよ』
『……』
『聞いてんのかよ!?』
空っぽの瞳で俺の背後を見つめた。
まるでもがれた翼の痕を確かめるかのように。

