運転しながらミラーごしで光を見つめた。
台本を握って目を瞑り、微動だにしない。
命を……吹き込んでいるときの光は誰も邪魔できない場所にいる。
対話して、共鳴しあってる。
この業界に関わる仕事をして、こんな役者は初めてだった。
初めて光と会った2年前。
14才にも関わらず、デビュー作品で主演女優より輝いていた。
この業界に入って二年しか経っていないのに、この子は今までどのぐらい命を吹き込んできたのだろう。
【演技の神様に愛された子】
いくつものメディアにそう取り上げれていた少女。
この子の才能に限界はあるのかしら。
空気が揺れる。
もう一回光を見ると目元にうっすらと涙を浮かべて、まるで台本の中身を飲み込んだかのようにこくりと息を吸う。
つぅ、っと涙が頬を伝い閉じられていた目蓋をそっと開けた。
そして柔らかく微笑んだ。
ああ。
会えたんだな、と確信した。
「おかえり、光」
「…ただいま」
しばらくして疲れたのかすぅ、と眠りについた光。
この子のこれからにずっと関わっていけたらな、と窓から見える夜空に願った。