「やー、ありえないって!」
利央が軽く笑う。
「ほんとだよ」
だけど琉飛もまたふわり、と微笑んで携帯へと目をもどした。
利央も晴翔も口あんぐり状態。
「どんなメールしてくんだよ?」
「え、普通だよ。今回は“琉飛のお母さんにサインあげる約束しちゃったよね!?さ…サインさ、あたし下手だから署名でいい!?あ、今気付いたけど"サインさ"って反対から読んでも"サインさ"だねっ……あ、そんなことなかった!!”だってさ」
そう言ってまた吹き出す琉飛。
「署名とか、あほだよ。みかん。しかもどうでもいいこと送ってくるの。下心なんて全然ないでしょ」
俺たちは黙るしかなかった。
「じゃーさ、誰で落ちるかやってみよーよーっ!」
「俺、パスっ!できねぇもん!!」
「晴のヘタレ」
「ヘタレってゆーな!」
今だに笑いながらメールを打っている琉飛の横顔を見て、口を開いた。
「おい、りゅ…」
「お前らー!元気かーっ!」
─バン!
開けられた瞬間にドアからみし、という嫌な音が聞こえた。
俺の呟きは虚しく激しくドアを開けたその人物の声によって消された。
「五時に召集かけて練習したんだって?やーっ、いい心がけだ!あたしも感動だ!」
口調はまるっきり男の黒い長髪を払ってる目の前の女を睨む。
「朝からうるっせぇよ!」
「あぁ!壱流!おはよう!じゃぁお前からやるから入れ」
人の話を聞かない奴、いやだ…。