シャワーを浴び、適当に服を着た。

サングラスを掛けようとした時、その横にあった昨日買った雑誌が目に入り、ぱらぱらっと広げるとちょうど、“あいつ”の特集のページで。



『透き通るような演技力』

『役を演じるのではなく、役として生きている』


……誉めてばっかかよ。


無償に腹が立って雑誌を閉じると同時に携帯が鳴った。


ディスプレイには琉飛の文字。


「…どした?」

『壱流、もう家でちゃった?』

「でてねぇよ?」

『じゃ、今壱流のマンションの下に居るから降りてきてよ』


返事をする前に切られた。

晴翔もこんぐらい簡潔ならな…。

帽子を深く被り家を出る。




「あ、壱流。おはよ」

「…琉飛。お前な、なんで何も変装してねぇわけ!?」


そこには普段の琉飛。帽子もサングラスも無し。


「あ、だから結構ばれたんだ」


琉飛の相手を真剣にするのはやめとこう。



「つか、俺迎えにくるって珍しくね?どうしたんだよ」

「晴翔のテンションに一人で付いていける気がしなかった」

はぁ、と溜め息をついた琉飛を見て、少し笑いが零れた。



「あと言うことあったんだ」と言い琉飛がこちらをじっと見る。


「なんだよ、改まって」

「俺、みかんにメアド聞いた」


俺の動きがとまる。


「だから…なんだよ」

「今はどうでもいいかもしれないけど後で壱流がみかんのこと何か思い始めちゃったら言うのめんどくさいなーって」

「何かもねぇから。ありえねぇから」


そう言って少し騒ついた心臓を抑え、呼んだタクシーに乗り込んだ。