廊下を歩いていると、また携帯が震えた。
「もしもし、壱流?」
『…琉、今どこだよ』
「これからラジオ局でるよ」
声のトーンを聞くからにはかなり機嫌が悪いらしい。
『俺、今局のロビーにいるから、降りてこいよ』
「迎えにきたの?珍しいね」
俺がくすっ、と笑いを溢せば壱流が顔をしかめたのが電話越しでもわかった。
「みかんとのこと聞きたいの?」
『……』
……図星。
エレベーターを降りると、確かに壱流がロビーのソファに腰掛けていた。
「壱流」
「…琉」
「スタジオどこだっけ」
「…Fスタジオ」
並んで歩きだし、横を見ると壱流も俺を見ていた。
「なに、壱流」
「お前、今日別にあの女のラジオなんか仕事になかっただろ」
「うん、飛び入り参加」
本格的に眉間に皺が増える。
「…んでだよ、あの女は」
「みかんは違うよ。断言できる。みかんは今までの奴らとは違う」
壱流が少し黙った。
「みかんは、壱流と同じ仕事への思いがすっごい強い」
壱流、壱流も気付いてんじゃないの?
「なに、琉。あいつの肩持つのかよ」
「肩持つとかそんなんじゃなくてもう少しだけ様子見てあげたら」
「様子?」
みかん。
みかんなら変えてくれる。
みかんなら俺らの考え、覆してくれる気がする。
「ドラマの初の撮影。それでわかんじゃない?」
「上等。じゃ、お前らも来いよ」
「俺たち最初から壱流の撮影全部付き合うつもりだよ?」
「お前らそんな暇じゃねぇだろ」
みかん、俺たちに証明してみせて