暗闇の中、ぼんやりと浮かぶ白いシルエットのもとに近づく。
なあ、次はお前が苦手なパートだろ。
そっと近づくと暗闇でも光が目を丸くしたのが分かる。
いいんじゃね、特訓のセンセイと一緒に歌うっつーのも。
重なる俺の声と光の声。まだまだ未完成だけど、どこか荒削りな歌声がなんだかくすぐったい。
あちらこちらからすすり声が漏れる。光もだんだんと涙声になってきていた。
余韻を残して、最後のメロディーが消えていくと満場が拍手で包まれる。
「…光」
最前列の観客に聞こえないくらいの声でささやく。
「ここのちょうど後ろのとこに隠しドアがある、そっから裏戻れ」
「あ…、うん!!」
まだこれを歌ったのが光だとばらすには早い。
後ろに移動する光にもうひと言。
「…帰んな、待ってろ、この公演終わるまで」

