腹が立ったわけじゃない。
悔しかったわけじゃない。
「…なに…それ…」
単純に……悲しかった。
別に、あたしとキスして、赤くなったりする壱流なんて想像できないし。
キスなんて慣れてるだろうし。
……あたしなんかより、もっともっと綺麗な女優さんたちとキスしてきたんだろうし。
「…そうだよね」
壱流には、今、あんな綺麗な彼女さんがいるもんね。
「お前だって、琉…」
「もう、いいっ!壱流なんか、あの彼女さんとキスしてればいいじゃん!あたしなんかとキスしたことなんて、あの人に忘れさせてもらえば良いじゃん!!」
「は…?ちょ、何言」
壱流があたしを見て固まる。気付いたら頬には涙が伝ってた。
……気のせいだ、悲しい…なんて。
「壱流なんか」
クヤシイ、んだよね?きっと。
こんな奴だと見抜けなかった自分が。
「…だいっきらい……っ」
あたしも一緒だったんだ。今までの女優さんと。
ちょっと優しくして、仲良くなれたら撮影とか上手くいけばいいや、とか思われてたんだ。
スキャンダルが出たとき、来てくれたのも、抱き締めてくれたのも、背中押してくれたのも。
──ぜんぶ、うそだったんだ。

