えっと……。
「誰とでしょう?」
「壱流くん」
…えっと……。
「誰がでしょう?」
「光ちゃん」
高崎光、ただでさえいつも起動してない頭が機能停止しました。
「光ちゃん、この前のドラマでのキスシーンも素敵だったじゃないか」
「……」
「楽しみだなあ、2人の想いが通じ合うシーンだからね」
「……」
「光ちゃん?」
きす、キス、鱚、帰す、kiss。
あたしと……壱流が?
「だ……誰か広辞苑持ってませんか」
「いや、持ってるわけないでしょ」
壱流と、壱流と……キス…って。
「光ちゃん、緊張してるのかい?」
「や、あの、きんちょ…緊張なのか…?いや、緊張じゃない。あれ、反語?え、そうじゃなくて、演技だし、お仕事だし…。あれ、割りきってるじゃん、あたし!キスシーンなんて、やったことあるじゃん!…ってことで、緊張してな゙…ん゙ん゙っ緊張してみゃ…ません!!」
「うん、してるんだね。壱流くんはいつも通りだったよ。さすがの人気アイドルはクールに返事してくれたよ、『分かりました』って」
笑って、そう言う秋山さんの声は遥か遠く。
…そっか、……壱流は平気なんだ。

