「みかん」
「え?」
優しく呼ばれたその声に俯けた顔を静かにあげる。
「おいで」
手を広げて、軽くあたしの手を引っ張って、…あたしは琉飛の胸に収まった。
「ちょ、りゅ…っ」
「みかん、いーにおい…」
「!?」
さっきメイクさんにつけてもらった柑橘系の香水が琉のお気に召したようで髪に顔を埋められて、あたしは色々パニック。
「…みかんは、ゆっくりゆっくりでいーよ」
「え?」
「早く気付いちゃったら、…面白く…ないし」
「へ?」
「まず…気付かなきゃ…いけないのは……、あっちだし」
全く噛み合わない会話に首を傾げる。あたしは琉の胸に…顔を埋めてる状態なので…表情が全く見えない。
「りゅ」
「あ」
何かに気付いたような、声を発した琉飛に再びクエスチョンマーク。
「…みかん」
「ん?」
「ちょっと…今だけ…ぎゅーされて?」
反論なんて出来ぬまま、あたしは強く琉飛に抱き締められた。

