記憶が飛ぶって、きっとこうゆうことなんだな、って思った。
「…無事…おわっ…たんだよね?」
楽屋に戻って、今入ってきたばかりのドアに寄り掛かりながらズルズルと床に座り込んだ。
「終わった…ぁ」
「つーか、歌番組これだけじゃねぇんだからさ、まだ安心すんには早ぇだろ」
「いち……っ!?」
後ろ向きになっているソファから顔を出し、頬杖をついているいちるを見て心臓が止まりそうになった。
「なんで…っ」
「別に?」
え、会話が通じない……。
「ただ、どんな顔してるか見に来ただけ」
こん…のっ、性悪……!!
キッ、と睨んでも意味を為さず、結局再び座り込む。
「あいつらも、来たがってたけどな」
「やっぱ、気づいてたんだぁ…」
「あんなトークしてたんだから、当たり前だろ」
ああゆうのを、公開イジメと言います。
「…ふん、貶されたって別に良いもーん」
「…ま、ラは出来てたし、ギリギリ落第は免れたぐらいだろ」
いちるは、そう言って、あたしに何かを投げ付けた。