今さら焦っても遅ぇっつーの。
「や、ちが!いちるっ!違うの!!」
「何が」
「あああああたし、歌なんて歌えないもん!!」
「誰も、お前が歌ってるなんて言ってねぇだろうがよ」
また失言した!みたいな顔してるけど、もうとっくにバレてるから。あと、お前の言動は大体が失言だから。
「音の強弱の付け方が足んねえ。ブレスの位置、確認しとけ。サビのとこ、もっと目立たせろ」
容赦なく告げたダメ出しに馬鹿はしゅん、とうなだれた。
……もう否定しねえのか。
ちらり、と馬鹿から視線を移して譜面台に置いてある楽譜を見る。
言われたアドバイス全てを書き込んだのか、真っ黒になっているその楽譜にはあ、とため息をついた。
「……これかよ、お前があんなになるまでやってたのは」
真面目にやりすぎて、自分にどれだけ負担がかかってるかも気にしないで…。
加減ってもんが、あんだろ。
未だに凹んでる馬鹿の額を指で弾く。
「―っ!」
「ただ、2オクターブ上のラは……まあまあじゃねーの」

