「壱流、スタッフさんたちが死にそうな顔してるから、抑えなよー」

「は?つか、利央なんで違和感なく現場に居んの?」


さっきから無意識に話し掛けてたのを誰かと思って見たら利央が普通にパイプイスに座って台本をぱらぱら捲ってた。


「仕事の休み時間ー」

「あ、そう……って!!」



朝浜光輝がさらに馬鹿に近づいていた。


…んで、あいつ気付かねーの!?


「完璧イラついてんじゃんー」

「うっせえよ」



痺れを切らし、馬鹿のもとへ行く。


「おい、撮影始まんぞ」

「あ、いちる!」


なに、その今気付いたみたいな反応。俺、30分前から居ましたけど。


頭のなかに「イラついてんじゃんー」という利央の声がテロップのように流れる。それをかき消すかのように頭を振った。



「お、壱流くん!」

「……どーも」


こいつ仮にも年上だから礼儀はわきまえる。

俺、プロだから


でも殺気は忘れない。