Drop Piece




ウィッグを被せられ、衣裳を着せられ、ちょこんと近くのイスに座る。


いちるたちもメイク直しにロケバスに戻っていった。

「光ちゃん、今回の曲は失恋ソングなんだ」

「……はい」

「君があの四人に想われてる設定で、だけど君は他の誰かを想って泣いている、そんなシーンなんだよ」


現実だとありえない話だからいまいち、現実味が湧かない。



でも。

もしあたしの好きな人が。

あたしじゃない誰かを想って。

泣いていたら。



どんな気持ちなんだろう…。


「……きっと、辛い…」

「え?」

「…何でもないですっ!どんどん始めましょうっ」



意気込むあたしの隣で女性のスタッフさんが声を漏らす。

「……かっこいいね、やっぱ…」



視線の先を追うと、メイクを終えたいちるたちの姿。


……あれ?


「いちる、髪がなんか違うね?」

「これが元の髪型だよ、今はドラマで変えてんの」


外にぴょこぴょこはねている髪が可愛く見える。



「なに、笑ってんだよ」

「べつにー」

「よし、じゃぁまずは晴と光ちゃん!!入ってー」


今だけ、好きな人がいると想って泣いてみる。