「いちるって呼ぶようになったんだね」


ふわり、とほほえまれる。


「……え?それって…」


どうゆう意味?と聞こうとしたら今度はロケ隊の人たちの「時間でーす!」という言葉に遮られた。






屋上に着くと、スタッフさんが素早く動いてみんなの分のイスを用意してくれた。


「あ、ありがとうございます」


そこに座り、いちるたちを見るとディレクターさんのところに集まって神妙な表情で話を聞いていた。



「わぁ……」



なんだか真面目な顔で、……びっくりした。


あたしが黙ってるといちるが近づいてきて呆れたように溜め息をつく。


「何アホみたいな顔してんだよ」

「や、なんかみんな真面目で」



そう言うといちるは口の端をくいっと意地悪く上げ、「どきっとした?」と悪戯に聞いてきた。



「うん」

素直に頷くと、いちるに顔を逸らされた。


「始めるよー」

「うぃーす」



髪をかきあげ、スタッフさんたちの方へ向かういちるの背中に声をかける。



「頑張ってね!」

「俺を誰だと思ってんだよ」


……はい、いちるさん。