「ちょっ、あたしが…っ」

「この俺が奢られるとか、ありえねぇから」

「だって約束…っ」

「うっせぇよ。お前は黙って奢られとけ」




レジにオーナーが立っていて、にやにやしながら俺を見ていた。


「んだよ、おっさん」

「へーぇ?あの壱流がなぁ?」

「きも。じゃぁな」



三万を出し、くるりと背を向け出口にむかう。



「おい、壱!」

「…んだよ」

「青春したいなら、さっさと他の片付けろよ?」


ちょび髭がぴくぴく動きながら、言ってきた。


「他の?」

「いんだろ、お前なら。女の子」

「いねぇよ、俺を楽しませてくれる女なんかいるわけ…」


そこでちょうど出口で待つ馬鹿が目に入る。


にや、と笑い、オーナーと向かい合う。



「…一匹…」



舌を突き出し、指を一本立てる。

「今の標的、仕留めたらまた来てやるよ」






「しら…じゃなくていちるっ!家どこ?」


満月の夜。


「なに来てぇの?」


一匹の狼は。


「んなわけないじゃん。途中まで帰ろうと思って」


一匹の羊に。


「ほんとお前うぜえな、即答かよ」


標的を絞る。