「いちる!」
違和感がまだ少し残ってる馬鹿の呼ぶ“壱流”は。
何故か、少しだけ、変な感覚に襲われる。
「もういいっ?罰はなしだよ!」
「…もっかい」
「へ?…いちる…?」
呼ばれるとまた呼んで欲しくなる。
んだよ、これ。気持ちわりいな。
「…これから、それな」
「なんでっ!?」
「決定事項。拒否権無し」
まだ“壱流”じゃなくて“いちる”だけど。
俺、こうゆう勝負で負けたことねぇんだよな。
俺に浸かる馬鹿の姿が思い浮かぶ。
落とすどころじゃ済まさねぇよ。
どっぷりはまらせてやるよ、俺に。
「帰るか」
「えぇっ!!お会計…っ」
そんな馬鹿を横目で見ながら、ナプキンに走り書き、それをまるめた。
バックから財布を取り出す馬鹿の頭にすこーん、と当たる。
「なっ…」
「明日、仕事あんのかよ?」
「え…」
「仕事あったとしても来いよ」
不思議そうな顔をする馬鹿に唇の端をあげて笑う。

