Jテレに着いてもいっこうに上がらないあたしのテンション。ぼーっとしすぎて通行証の提示を忘れてしまった。
ガコンッ
「っわ、すみませ…」
「もう、光なにしてるの」
焦って通行証を提示して通ると、松井さんがじっと見てきた。
「?」
「あのね、光。今回は私も断ろうと思ったわ。映画のPRで忙しいでしょ?」
こくり、とうなずく。
「だけどね、今回の役柄を見て絶対光にやらせてあげたい、って思ったの」
ふわりと松井さんが笑って、あたしの頭を撫でる。
「光がやらなきゃいけない、やらなきゃ後悔するって思った」
「……」
松井さんはズルい。
あたしのやる気の出し方なんて熟知してて、簡単に引き出す。
「松井さん」
「なーに」
「やらせてください」
松井さんがそんなに言ってくれる仕事受けないわけがない。
「その意気よ」
目の前にある会議室への扉。
息を大きく吸い込み、ドアノブに手を掛けた。
「こんにちは!!高崎光ですっ」
室内からは温かい拍手と笑顔に迎えられた。
…ある4人を除いて。