「本気出すって…」




ひとり呟き深くため息をつくと、後ろに人の気配を感じた。




「絢音っ」




後ろを振り向くと、そこには赤い顔をして苛立っている様子の美々ちゃんが立っていた。




「美々ちゃん…どうしてここに？」




「心配で後ついてきたら…やっぱりね。夏川　栞のやつ、蒼くん狙ったかぁ…」




美々ちゃんは、あたしと栞ちゃんの話を木の陰に隠れてこっそり聞いていたらしい。




「何度も飛び出して文句言おうって思ったけど…絢音が言い返したから安心したよ。強くなったじゃん、絢音！」




美々ちゃんはあたしをぎゅっと抱き締めた。




「あたしもうダメかも…あんな美少女に告白されたら、蒼だって…」




「さっきまで強気だったくせに！何…急に弱気になってんのよ！？」




美々ちゃんはあたしの身体を離し、肩を力強く掴んで真っ直ぐにあたしの目を見つめる。




「確かに見た目は負けてるかもしれない！でもね絢音のいい所は、バカなほど純粋な所だよっ！」




美々ちゃん…それ




「バカって…それって褒めてる？けなしてる？」




「応援してんの！あたしはねぇ、絢音の味方だからねっ？」




「…ありがとう。あっ！そういえば蒼のタイプってバカな女の子って言ってた」




「なにそれ？」




勝ち目なんて…何もない…


ただ好きという気持ちだけで



何が出来るのだろうか。




でも蒼を譲れない。




「誰よりも蒼くんの事をわかってるのは、絢音なんだから。ねっ？」




「……美々ちゃん…」




見た目は普通だし


他の女の子より

あたしの方がいいよ
…なんて



言えるところ、何もない




でもね…蒼が好き




この気持ちを

大切にする




勇気に変える




ずっと蒼のこと


好きだったんだから