幼なじみ〜first love〜

これほど真剣に勝負する必要があるのだろうか。
そばで見守って応援している幼稚園児たちにとっては、蒼も遊也もヒーロー的存在なのだろう。




だけど、あたしも美々ちゃんもケンちゃんも、半ば呆れて二人の姿を見ていた。




高校生になってまで、そんなにたくさん金魚が欲しいですか?そんなに育てられますかと。ひとり心の中で突っ込みを入れるが、口には出さない。




…金魚すくいの勝者は、遊也。




「へっへっへ…俺が負けるわけないやろ?アホ。蒼のおごりやんな?」




得意げな遊也と蒼はすくった金魚を子供たちにあげていた。




「はいはい…おごりゃいんだろ?」




蒼は、憎たらしい口調で遊也に向かって言った。本当はすごく悔しいんだと思う。なんか笑える。




「ちょっと俺ら、抜けていい?」




ケンちゃんがいきなり美々ちゃんの腕を掴んで言った。美々ちゃんはケンちゃんの顔を見て、首を傾げる。




「なんなの?ケン…」




不思議そうに美々ちゃんが訊くと、ケンちゃんは美々ちゃんの手を引き、走り出した。




「いよいよやんな…」




人混みの中をかき分けていく、ケンちゃんたちの姿を見て、遊也はうんうんと頷いている。




「「な、なにが?」」




遊也の言葉に、あたしと蒼は同時に訊いてしまった。




「なんやおまえら、気づいてへんかったんか?」




知ってて当たり前のような顔をして、遊也はあたしと蒼の顔を交互に見る。




「えーっと…何が?」




「ケンが、美々に告白するんや」




「「こ、告白っ!?」」




あたしたちは驚きのあまり、見つめ合って叫ぶ。




「ケンちゃんて…美々ちゃんのことが好きだったの…?」




「おまえら…ほんま鈍感バカップルや…」




遊也はまたもや、あたしと蒼に呆れ、深くため息をついた。