気持ちの逸りを押さえきれない。そんな感じが言動すべてから伝わってくる。


花火大会は、すでに始まっていた。

体に響くような低い爆音が、まだだいぶ遠いこの場所まで聞こえてくる。


「ちょっ、待って!」


アタシは小走りでユウヤを追った。

慣れない鼻緒に足が痛んで、歩きにくい。


なんで雪駄で平気なんだろ。


待ち合わせた時から、ユウヤはやけにご機嫌だった。

アタシの手をひっぱっては、次々と露店を覗いてまわる。


「あ!見える見える!」


指さされたマンションの後ろ、大輪の花火が半分だけ、空を赤く染めていた。