じーゎじーゎ……
カナカナカナカナ……


夕暮れを過ぎた紺碧の空に、蝉の合唱がこだまする。


「いちごでイイ?」


露店のおじさんに小銭を渡しながら、ユウヤが振り向いた。


「うん」


昨日二人で選んだ濃紺の甚平がよく似合う。
アタシは、白地の浴衣を汚さないように気をつけて、かき氷を受け取った。


「しっかし、すげー人!」


子どものように興奮してはしゃぐユウヤを見ていると、なんだかアタシまで楽しくなってくる。


「食べながらで大丈夫でしょ?」


返事を待たず、ユウヤは人混みに分け入った。