アタシはただ、会話の糸口が欲しかった。


「だって…………勉強ばっかりしてたし……母さん、厳しくて……」


チラリとだけ目を合わせて、ユウヤはまた、俯く。
ほんの一瞬だったけれど、その、すねたような、恥じらったような表情。


……男の人って、こんな顔、するんだ。


子どものような態度に、ほんの少し、親しみがわく。


「ユウヤの地元って遠いの?」


かすかな親しみは、アタシに、ユウヤへの興味をもたせた。


「……田舎、だよ」


なんとなく手をほどけぬまま、アタシたちは話した。
家のこと、高校のこと、好きな音楽のこと。