アタシは、直感で、訪ねてきたのはお母さんだろう、と思っていた。

なのに、この静けさ。

リビングにいるのは、もしかしたら無口なユウヤのお父さんなのかもしれない。


カチャ


アタシは細くドアを開けて向こうを覗いてみた。

こっそり開けたつもりなのに、ノブの回る音がやけに大きく思え、内心、冷や汗をたらす。


……あれ?


姿が見当たらない。
やはり、幻聴だったのだろうか。

アタシは足音をたてないようにリビングに入った。


寝室、かな?


だったら、なおさら立場は危うい。

いっそのこと、このまま帰ってしまおうか……。


ガタンッ


突然、何かが床に落ちたような物音が寝室から聞こえた。

気のせいでなければ、悲鳴のような、微かな声も。