きつくアタシの腕を掴み、引っ立てるようにバイクまで歩くユウヤは、無言だった。


背中から何の表情も読み取れないまま、顔を合わせることなく、ヘルメットを押し付けられる。

つい数分前まで、ハルコが被っていた、同じメット。


複雑な気持ちは当然ある。
けれど、そんなことどうでもいいと思えるほど、アタシは、恐怖で支配されていた。


黙りこくったユウヤが、怖い。

これから起こる何かが、怖い。

そして……ユウヤを失うことが、怖い。


きっと、アタシを待っているのは、ハルコを選んだユウヤの別れだ。
メールでどれだけ愛してると言ってこようが、アタシはこの目で、あの姿を見てしまった。


浮気相手は、もう、アタシの方になってたんだ……。

彼女じゃ、なかった。


小刻みに震える手で、顎の下のベルトを締める。