ふと、思いつく。


管理人に連絡して合い鍵をもらわなくちゃ。

放心してる場合なんかじゃない。



「あれ?」


管理人室に降りようとした、その瞬間。
背後で明るい声がした。

エレベーターの閉まる音に重なった、覚えのある、男の声。


「チサちゃん?」


名前を呼ばれ、振り返る。


「なっ……!」


アタシは言葉を失った。


見覚えのある、顔。女ウケの良さそうな細面に、長身の……。


「ユウヤ!?」


「思ったより早かったね。ま、あがってよ」


手に提げたコンビニ袋をガサガサさせながら、ユウヤは人懐っこく、ふわりと笑った。