「すみません、急いでください」 アタシは早口に、運転手さんに行き先を告げた。 タクシーに乗るほどの距離ではなかったかもしれない。 けれど、今は一分一秒が惜しい。 ユウヤのマンションは、アタシの家からワンメーターの近くにあった。 乗り込んだタクシーは、前の乗客の酒臭さが抜けていなくて、気持ちの悪いぬるさだった。 でも、車をつかまえられただけでも、運がいい。 最初の一瞬こそ気になったものの、すぐに、アタシの意識は携帯に戻った。 早く、早く!