「じゃ、ごめんね。お金、預かっといてくれる?
ユウヤ、行くよ!」


机に5千円札を置き、歩き出す。


「待ってよ~」


本当は……まんざらでもない。
ユウヤがわざわざ来てくれるなんて、素直な気持ちは、すごく嬉しい。


他の女とは違う、特別なんだって、実感できる。


澱んだ不安が、晴れていく。


「飲み直そっか」


しつこくハルコに手をふるユウヤの腕をとり、アタシは、エレベーターの扉が閉まるのを待って、指を絡めた。


「何、急に」


ま、イイけど。


驚きをそのままにして、ユウヤはアタシをきつく、強く、抱き締めた。


街の乾いた光も、冷えてきた夜風も、今はすべて、心地いい。


大丈夫。


何度ユウヤに言い聞かせたかわからないその言葉を、アタシはゆっくり、自分に向けてつぶやいた。