――でも。


「ねぇ!名前何ていうの?」


あたしの心情を知る由もなく、休み時間になる度にあたしに話し掛けてくる秋田さん。まぁ、彼女の右隣が男子なのもあるせいか、必然的にそうなるのもわからなくはないけれど。


「…大崎陽路。」


半端な時期の転校生――…
知り合いがいない彼女を無下にもできず、聞かれたことにはそつなく答える。

けれどやっぱり、さっきの胸騒ぎが纏わり付いて、気がかりで。あたしの本能が、彼女にはあまり関わるなと警告しているようで…。

第一、秋田さんと話したくてこっちをチラチラ窺うように見ているミーハーな奴らは何人もいるんだ。そいつらと話せばいいのに…


「大崎陽路ちゃんね!あ、陽路って呼んでもいいかな?」

「いい、けど…」


そんな風に思っているあたしに構わず、秋田さんは勝手に話を進めていく。

呼び捨てでもかまわないよ?別に。みんなあたしをそう呼んでるし。だけどまだ、お互い何も知らないのに。ちょっと馴れ馴れしく感じたのもまた事実。一々言わないけど。