凌葉学園中等部、3年A組。
あと一年で中学卒業っていう半端な時期に、あたしのクラスへ転校生がやってきた。


「秋田美香です♪よろしくねぇ。」


茶色いロングの巻き髪を、指で弄びながら自己紹介をする女の子。多少…否、間違いなくぶりっこだけれど、その可愛さにクラスの男子が騒ぐ。

そんな様子に溜め息をつき、盛り上がる教室内を一番後ろの窓側の席から見渡してみれば、やっぱり空席はあたしの横しかなくて。


「あの空いてる席が秋田の席だ。」


予想通り担任に指示され、こちらに向かってくる彼女。たまたま目が合ったあたしに、「よろしくねぇ。」と言って席に着いた。

初対面のはずなのに、何故か感じる胸騒ぎ…。そんな不安感を追い払うように、あたしは視線を窓の向こうへ投げた。