「いーえ。あ、報告は一番に俺にしてくださいね?待ってますから。」
いたずらっ子のような笑みを浮かべ、寿也はそう言う。でも、そんなの当然だよ。
「あたりまえでしょ。すぐにでも電話するから。」
「ウィッス。…じゃ、俺そろそろ練習戻りますね。」
「うん。頑張ってね。」
ボールのカゴを抱え、コートの方に駆けていく寿也の後ろ姿を見つめる。ついこの前まで中学生だったのに、あっという間に大きく、立派になった背中。心優しい、後輩の姿。
その手を離したあたしの選択が正しかったのかどうかはまだわからないけれど。でもいずれにしろ、正しい答えはないのだろう。
寿也がコートに入ったのを見届けてから、目的地に急ぐためあたしも踵を返す。
向かうのは“凌葉”。
正解なんてない、自分の答えを求めて。