『いいんだよ。あたしにはあたしの“今”がある。今は海星での守りたいものがあるし、もういつでも、会いたいときに会いに行けるから。』
海星での“守りたいもの”が“俺たち”であると思うのは、少し自惚れすぎだろうか?
でも陽路先輩の言い方には、そんな風に感じさせるものがあった。
「陽路先輩がいいならいいんスよ。もう、後悔しないでくださいね?」
『あら。あたしは今も昔も後悔はしてないわよ。ちょっと悔やんでただけ。』
「…それが後悔じゃないッスか。」
『…ははっ。まぁね。』
こんなくだらないような会話。それでいて心が和む。今だってほら、電話前には荒れかけていた感情が、今ではいつも通りにおさまっているんだ。