美香の家は、今までいた喫茶店とは逆の方向にある。まだ美香が本性を現していない頃、1・2回行ったことがあるから、何となく場所はわかるはず。
歩いて二十数分、左足にだるさが溜まってきた頃、ようやく秋田家の玄関口にたどり着いた。
息を整え、気持ちを落ち着かせる。
例え美香が今どんな気持ちでいようとも、あたしはここで会わなきゃいけない、そんな気がするから。
一つ大きく深呼吸をして、ゆっくりとインターホンを押した。
「…どなたですか?」
すると、聞こえてきたのは偶然にも美香の声。心なしか元気のない声に、あたしは静かに口を開いた。