「だからあたしはもう、凌葉に戻る気はない。」
凛としてそう言い放つと、「そうか…」と紀彦が呟くのが聞こえた。
そして再び、あたしたちの周りだけ沈黙に包まれる。人々の話し声が、やたらと大きく聞こえた。
………あ、そういえば。
冷静に考えてみたら、一番重要なことを忘れていた。
すべての元凶、すべての発端である美香…。何もかもがバレた今、彼女はどうしているんだろう?
「ねぇ、美香はどうしてるの?」
“美香”という名前が出た瞬間、三人の肩がビクリと震えたように見えた。そしていっこうに口を開かず、顔を見合わせる。
「ねぇ?」
再び問いかけると、苦虫を噛み潰したような顔をした治が、ゆっくりと話し始めた。

