ようやく来た電車は、思いの外空いていた。容易にイスに腰掛けることができ、小さく息を吐く。

車内で耳に入ってくるのは、時折聞こえる話し声とやたら大きく聞こえる冷房の音だけ。

ぼんやりと車窓に視線を投げると、見慣れた風景が徐々に懐かしい風景に変わっていく。

こっちに越してきて以来見ることのなかった風景は、三年前と何一つ変わっていないようにも見えた。

記憶の断片に、忘れかけていたものが蘇っていく。

ぼーっとしていると、あっという間に時間は過ぎていくもので。気がつくと目的の駅に到着しており、懐かしさに引かれるように電車を降りた。


「…帰って、きたんだ。」


思わず零れた一言は、三年ぶりに降り立った地に向けて。

気を引き締めるようにきゅっと唇を噛みしめ、いざ約束の場所へと向かう。