しばらくぼーっとしていると、ベッドのわきに放っておいたカバンの中から、着信を知らせる音が鳴り響いた。

ディスプレイに映った名前は涼夜。
涼夜があたしに何の用だろう。


「もしもし?」

『あ、陽路先輩?元気ッスか?』


一週間ぶりに聞いた幼なじみの声。
全然いつも通りだけど、少しだけ感じた違和感に、生じた疑念。

まぁその理由は、涼夜から発された“先輩”というワードだろう。いつもの電話なら、涼夜はあたしのことを呼び捨てにするハズだから。

この電話はいつもの他愛ないモノではないんだなと、何となく感じた。


「元気だけど。いきなり電話なんて、どうした?」


儀礼的にそうは尋ねてみたものの、これから話題になるだろうことなんて、それこそ簡単に予想がついていた。