「…泣いてるんですか?」


突然聞こえた声に、ふと視線を元に戻す。すると、怪訝そうな顔をした雅樹と目があって。
っていうかあんた、さっきまで寝てなかったっけ?


「…起きてたんだね。」

「イヤ、寝てましたけど?」


そう言って雅樹はゆっくりと席を立ち、あたしの横に腰掛けた。いつもの飄々とした感じとは違い、何だかスゴく優しい感じの表情をしている。


「…寝てたくせに、何で“泣いてるんですか?”なんて聞くワケ?」


今の涙は、どうしても誰にも見られたくなかったのに。

隣の雅樹にそう問いかけ、あたしは再び車窓へ視線を投げた。