「俺、実は中学の頃、一回陽路先輩と話したことあるんスよね。確か俺が、中一の春季大会の時に。」
…え?
寿也が中一なら、あたしは中三…。
記憶をさかのぼってみるけど、全く思い当たることがない。っていうか、その時期はあまり思い出したくない。
「陽路先輩は覚えてないかもしんないッスけど。」と言い足した寿也の声が、虚しく響く。
「あんとき俺、スッゲー攻撃型テニスっていうかメチャメチャな試合する三年と試合したんスよ。で、バコバコ体にボール当てられるし、最悪で…。まぁとにかく、屈辱的な試合だったんっス。」
刹那、記憶のカケラが脳裏をよぎった。
周囲からのブーイングがヒドかった試合、フラフラになりながらも必死にボールを追っていた男の子…。
何か、覚えがある気がしないでもない。

