「ふん。謝るくらいなら倒れんなって感じだけどね〜。ま、陽路がいなくても余裕だったからいいんだけどぉ。」


不気味な笑みとともに発された言葉が、不意に耳に届いた。もちろん、その声の主は美香。

それにしても言ってくれるよね。
確かに倒れたのはあたし自身が弱いからだし、突っ込まれるのは仕方ないかもしれない。だけど、あたしがいなくても余裕だったなんて、美香には言われたくない。

「あのさ、美香…」そうあたしが話し始めようとした声は、勢いよく開けられた大広間のドアの音に遮られた。


「うー…。腹減った〜。」

「タケ先輩さっきからそればっかり。」

「腹減ったもんは仕方ねぇ。」


剛と涼夜がそんな会話を交わしながら大広間に入ってくる。その様子を見ながら、続けられなかった言葉を胸に押し込め、あたしはカウンターへと向かった。