音のしない世界。
真っ暗な視界に次第に明るさが差し込み、それと同時に戻ってくる感覚。右手に、気持ち安らぐ温もりを感じた。
開けた視界をふと右に移すと、金色っぽいふわふわの髪の毛が見えて。この右手の温もりの正体、あたしの手をぎゅっと握ったまま優しい寝息をたてている男の子。確かめなくたって、それが誰かくらいわかる。
「慈朗……。」
あたしはそう呟き、左手で彼の髪をなでた。
「ん……。」
軽く声を漏らした慈朗の視線は、寝ぼけ眼のままあたしを捉える。あたしが目覚めたのを確認したその刹那、目は一気に見開かれ、すぐさまあたしに抱きついてきた。
「陽路ちゃん…!」
大好きな声で、あたしの名前を呼びながら。