「俺は別にいいんだが…。阿久津はそれで大丈夫なのか?」

「ああ、気にするな。アイツはあとから柊先生に長い説教くらうだろうよ。今のアイツにとって、一番大切なのはあの人だからな。」

「そうか…。」


聞いていて、虚しくなるような会話。
何なのよ…!凌葉出て行って、完璧に縁切ったんじゃなかったの?あれからもう三年も経つのに、あの二人の気持ちは全然変わってないっていうわけ?笑っちゃうわ。

何となくその場にいたくなくなり、あたしは仕事場に戻る。蛇口を思いっきりひねり、勢いよく出てきた冷水で顔を洗った。
とりあえず、気持ちを落ち着けないと…。

大きく深呼吸をして、その場からコートの練習風景を見渡してみる。そのときなぜか、木原の姿に目が止まった。