何だか知らないけれど、あたしが寝ている間に陽路が倒れたらしい。スゴくいい気味だと思ったのもつかの間、みんなは陽路のことばっかり心配するし、陽路の分の仕事も勝手に割り振りされちゃうしで、あたしの気分は悪くなる一方…。

そんな中、九時になって午前練が始まり、あたしたちマネは途端に忙しくなる。第一コートと第二コート、二つを行ったり来たりしてただでさえ大変なのに、無駄な暑さが汗を滲ませた。


「吉山!阿久津がいないようだが、どうしたか知らないか?」

「いえ、わからないです。」

「そうか。」


第二コートに作ったドリンクを運んでいるとき、たまたまフェンス際で会話を交わしていた塚本と吉山の声が耳に入ってきた。

阿久津がいない…?

それなら、いるところはたった一カ所しかないじゃない。