「…陽路ちゃん、俺ね、ずっと陽路ちゃんを待ってたんだよ。あの日、陽路ちゃんがいなくなってからずっと、陽路ちゃんがまた戻ってきてくれるの、ずっと待ってた。」


カーテンが開けられている窓から、優しい日差しが差し込む。あたたかな空気が俺たちを包み込む中、俺は一人で話し続ける。今の陽路ちゃんに言っても、意識がないんだからわかるはずないのに、どうしても言わないではいられなかった。


「でももう、戻ってこれないんでしょ?俺たち別に、陽路ちゃんのこと裏切り者だとか思ってないのに。喜んで歓迎するのに…。」


握った右手から、陽路ちゃんの体温が俺に伝わってくる。今ここに陽路ちゃんがいる、それこそが今の俺のすべてだった。

自分の左手を伸ばし、陽路ちゃんの右頬に優しく触れる。まだ顔色は戻ってなく、少し冷たさを帯びた頬。静かにたてられる寝息に、俺は小さくため息を零した。