「…あたしも好き、かな。」


寿也の胸に顔を埋めたまま、あたしはそう呟いた。まだまだ曖昧で、あやふやで、正しいのかどうかもわからない気持ち…。それなのに躊躇なく言葉を紡ぐあたしは、いつからこんな残酷な性格になってしまったんだろう。ジャージ越しに伝わってくる寿也の拍動に、罪悪感が込み上げた。


「え。マジっすか!?」

「……うん。」


そう言ってあたしから体を離した寿也の顔は、いつになく真っ赤で。あたしは自身の迷いを打ち消すように、ふっと短い笑みを零す。


「寿也を信じてみることにする。」


あたしの言葉に、「はいっ!」と元気よく答えた寿也は、いつもの笑顔をあたしに向けてくれた。

この笑顔が好き。
その事実に、嘘偽りは無い。
だって、元気になれるし、そのうち本当に、過去を忘れられそうだから。

だから…。だからずっと、あたしのそばで笑っていて。勝手過ぎるかもしれないけれど、あたしはもう、誰も失いたくない。