「寿也、そろそろ行ってみるかい?」

「…そッスね。」


俺が両手に作った握り拳をふるわせていることに気づいたのか、それとも単に、俺の視線の先を追っただけなのかはわからないけれど、いつもと変わらぬ穏やかな口調で村田部長はささやいた。トレーを返却口に返し、二人で大広間を出る。

コツコツと、二人分の足音が多目的ホール前の廊下に反響した。今朝…っていうかついさっき、俺が沢村先輩と口論を起こした多目的ホールを見つめる。さっきのことを思い出すと、不意に胸が苦しくなった。それと同時に、ものすごい情けなさに襲われる。

そんなに長くない崎村先生の部屋までの距離が、果てしなく長いと錯覚してしまう。ここまで来て今更だけど、俺、どんな顔して陽路先輩に会えばいいんだよ?

コンコンと、村田部長が部屋をノックする音が響いた。