「はい。みんなテキトーにドリンク持ってって。」

「…。」


急にドリンク配りの仕事を投げ出したあたしに、案の定、何か言いたそうな人たちが若干名。いつも通り配ってくれ、と言わんばかりに向けられる視線に気づかないフリして、信頼のおける後輩に全てを委ねる。


「…寿也、頼んだ。」

「はいっス。」


あたしの言葉に大きく頷くと、寿也はあとから来た二年の5人にドリンクを配り始めた。
その様子を見ながら、気づかれない程度に小さくため息を吐く。

…――別にあたし、マネージャー業を放棄してるワケじゃないんだよ。仕事自体はやりがいもあるし、部活のメンバーと居られる時間は何よりも楽しい。ただ…、ただ最近、彼らの笑顔にチクリと胸が痛み出す。


「…陽路先輩は、そろそろオバサンの仲間入りですか?」


再びはぁっとため息を吐き、青空を見上げたあたしに突き刺さった、辛辣な一言。
睨みつけながら声の主を捜すと、案の定そこにはいたのはあたしの天敵、野本雅樹だった。