うつむき、慌てて涙を拭う。でもこんな時間、一体誰?


「…陽路先輩?」


そうあたしを呼ぶ声で顔を上げると、不思議そうな表情を浮かべた恭汰と視線が絡んで。


「こんな時間にどうした?明日は一日練習だよ。恭汰も早く寝なきゃ…」

「泣いてたんですか?」


必死にごまかすようにして話すあたしを遮るように、恭汰があたしに問いかける。そのまま躊躇うことなく隣に腰掛けた恭汰に、あたしは答えることができなかった。


「……トイレ行こうと思ったら、廊下から足音聞こえてきて。こんな時間で気になったから来てみたんだ。」


うつむくあたしに、広がる沈黙。
その沈黙を破るように、できるだけ明るく、恭汰はそう話しだした。