だが、やはり確信してしまったことは、陽路先輩の気持ちがまだ慈朗にあるという事実。

理由は知らねえが忘れようとして、自分の気持ちを押し殺していたに違いない。陽路先輩は昔から、そういう人だった。

階段を上りきり、にぎやかな部屋の前に立つと、カードキーを差し込みドアを開ける。ゆっくりと部屋に入れば、隣の部屋にいるはずの慈朗が俺に向かってきた。


「…何で慈朗がいるんだよ?」

「学くんに呼ばれてトランプしてた。渡部もやろー!」


今日取り戻したばかりの、眩しい笑顔が俺に向けられる。陽路先輩と再会したおかげで戻ってきた、慈朗らしい笑顔…。

さっきの話は慈朗には言えねぇ。イヤ、俺から話すことでもねぇ。
すべては今後の、陽路先輩の行動にかかってるから。