今まで、何食わぬ顔をして陽路先輩を苦しめて、悩ませてきたのであろう秋田先輩。俺は生理的に受けつけねぇ。


「…わかったッスから放してください。」


俺はそう言って掴まれた手をふりほどくと、彼女に背を向け、宿舎へと足を向けた。コートを囲むフェンスを出る頃、後ろから藍前が俺に追いつき、横に並ぶ。

オレンジ色に染まる道に、俺たち二人分の足音だけが響いている中、ただやり切れなさが俺を支配していた。

自信が持てない自分と、本心を隠す陽路先輩。俺はどうやって陽路先輩に接していけばいいんだよ?
陽路先輩は俺を見てくれるのか?
陽路先輩はマジで阿久津先輩をどう思ってんだ?

不安と疑問が交錯する中、藍前の言葉も思い出される。

“俺も陽路好きだから。”

俺だって……‥。